新型(非定型)うつ病の多くは、いやなことがあった場合でもその事実を自分で把握できないために、なぜかは
分からないまま気分が滅入り、落ち込む傾向があります。
その状態が繰り返されると、やがて身体にも影響が出始め、「体が重い」という(ような)感覚が続きます。と
ころが、身体が発する危険シグナルをうまく処理できない場合は、ストレスも解消しないままに、その信号を放
置してしまう場合があります。発達障害などの方に多く見られます。
やがて、人によっては、朝起きようとすると「突然」身体が鉛のようになってしまい、手足を動かそうと思って
も自由がきかなくなります。この状態を鉛様麻痺(身体がまるで鉛のように重くなって、ほとんど行動できなく
なる状態)と呼んでいます。
こころと体が連動して「うつ状態」におちいり、さらに、過眠も伴うこともありますので、ベッドの中で横にな
っているしかないような状態が発生します。
ご注意いただきたいのは、「突然身体が硬直する」のではなく、「危険信号の見落とし」が症状を重くしている
といって差し支えないと思います。ご家族の方がいても、本人がつらさや苦しさを表現しないために、見逃して
いることも多いようです。
サラリーマンの場合は、朝起きようとしてもどうにも起き上がれず、欠勤が続いてしまうということにもなりま
す。本人がわざと動かさないのではなく、自分の意志ではどうにもならないところで身体が反応してこのような
状態になっているのですが、会社の同僚や上司からすれば、「特に何も不調を言ってなかったのに、単にサボっ
てるだけかも」と映ってしまいます。
自分でもなんとかしたいと病院を受診したりするのですが、いくら検査を重ねても「異常なし」という結果にな
る場合もあります。
当相談室にお越しの方の例では「慢性疲労症候群」と診断された方もおられますから、そちらの専門医にも診察
してもらうと良いでしょう。他のページにも記載していますが、医療も専門化が進み、鉛様麻痺のような身体症
状の場合、複数の科を受診したほうがベターだと思います。
新型(非定型)うつは、周囲の方から病誤解されがちな病気ですが、この鉛様麻痺は、特に誤解を生みやすい症
状だといえます。
この症状のある方は、自分の身体の管理が苦手なのが大きな特徴です。重篤化する前にお越しいただいても、ご
家族の方が一緒でない場合にはいくら説明しても「自分はしんどくない」という反応がありますので、とても難
しい症状だといえます。一般的なうつに比べて、ひと手間以上余分な対応が必要だということです。
その他注意点としては、鉛様麻痺をピアカウンセリングで受けるのはとても危険だということです。自分自身の
身体管理が苦手なカウンセラーは、経験を語ることはできても、クライエントさんの症状を判断することが難し
いからです。リスクを考慮してお受けください。